Kon Laboratory

ROSI (Reverse Omega Shoe Insert)

The Challenge:歩行再建における「フォアフットロッカー」の壁

脳卒中片麻痺者における歩行機能の再建は、リハビリテーションにおける最重要課題です。屋外歩行を自立し、社会復帰を果たすためには、十分な歩行速度の獲得が不可欠です。しかし、多くの片麻痺者は立脚終期における「フォアフットロッカー(FFR)」機能が消失しており、前方への力強い推進力を生み出すことができません。

既存の短下肢装具(AFO)は、足の振り出し(クリアランス)や支持性の向上には寄与するものの、足関節の動きを制限する構造上、かえってFFRの出現を阻害し、推進力の低下を招くという大きなジレンマを抱えていました。

The Innovation:逆転の発想「抜重」を力に変える

近年、スポーツ分野を中心にカーボンプレートを内蔵したシューズが普及していますが、これらは「大きな荷重でプレートを撓ませ、その反発力で推進する」というメカニズムです。通常の歩行では、最も重心が高くなる立脚中期に一時的な「抜重(荷重減少)」が生じるため、従来のカーボン技術では十分なアシストを得ることが不可能でした。

そこで我々は発想を逆転させ、この「抜重」のタイミングを活用する独創的なカーボンインソール「Reverse Omega Shoe Insert(ROSI)」を開発しました。

The Mechanism:生体力学に基づくパラダイムシフト

ROSIのコアとなるのは、特殊な積層技術で成型された「逆オメガ(Ω)形状」の薄型カーボンプレートです。

  • 1. 荷重応答期 自重によって逆オメガ形状が押し潰され、フラットな状態になり足底を安定させます。
  • 2. 立脚中期(抜重時) 重心が最も高くなり荷重が抜ける瞬間に、カーボンが元の逆オメガ形状へと力強く復元します。
  • 3. 推進力の創出 復元時に逆オメガの頂点が「仮想的な回転軸(ROSI軸)」として出現します。床反力作用点(COP)がこの軸を前方に越えることで、力学的に踵離地(ヒールライズ)が誘発され、失われたFFRを再構築します。

Clinical Evidence:全国39施設・184名の大規模調査が証明する実力

ROSIの有効性は、厳密な客観的データによって裏付けられています。全国の大規模モニタ調査において、ROSIを使用した片麻痺者の実に67.9%が「歩きやすさ」の明らかな改善を実感しました。

さらに、歩行速度は即時的に平均0.06m/s向上するという、歩行の質を根本から変容させる強力な効果が確認されています。

また、データを詳細に解析した結果、ROSIの効果を最大限に引き出すための「境界条件(カットオフ値)」が判明しました。

速度の壁

0.63 m/s 以上

ROSI非装着時においてこの歩行速度を有することが、推進力アシストを最大限に享受するためのカギとなります。

最適バネ定数

1.43〜1.5 N/(mm·kgf)

患者の体重に対しこの比率でバネ定数を設定することで、不安定感を排除し、最も効率的な歩行を可能にします。

Beyond Stroke:脊髄性麻痺への新たなアプローチと未来

ROSIの可能性は脳卒中片麻痺にとどまりません。最新の研究では、脊髄性麻痺者に対してもその有効性が示唆されています。

底屈筋力が低下した脊髄性麻痺者に対し、背屈制動機能を持つ短下肢装具(AFO)とROSIを併用することで、立脚後期のCOP前方移動量が劇的に増大。足関節底屈モーメントが補償されることで、前方への推進力が飛躍的に向上し、結果として歩幅の有意な増加が確認されました。

Kon Laboratoryは、このROSIテクノロジーを通じて、義肢装具学の発展と社会実装を牽引し、歩く喜びをすべての人に取り戻すための研究を続けています。